愛色SHERBET
「そわそわしすぎよ愛華」

さっきからキョロキョロと辺りを見回したり深呼吸してみたり、とにかく落ち着きがなかった私を、母はくすくすと笑いながら指摘した。


緊張してる?と聞かれたが、そうじゃない。どちらかといえば、期待感の方が大きいのだから。


「だって楽しみなんだもん」
「5年ぶりだものね」

空斗(そらと)くん、もうそろそろ出てくると思うんだがなぁ」
父がちらっと隣の家に視線を向けた。



私達の白塗りの家の隣に並ぶ、グレーの家。

そこからドタバタと足音が聞こえてきた。階段を駆け下りる音だ。

それから5秒もしない内に勢いよく開け放たれた扉が、外壁に当たってバンッと大きな音を出した。



「あぁっまたやってもた」

なまったイントネーション。
聞き覚えのない少し高めの男声。

屋内からひょっこりと顔を出したのは、180cmはありそうな高身長に広い肩幅の青年。
ただその体格からは想像し難い、かわいらしいくりくりした黒目が特徴のベビーフェイスは、見覚えのある懐かしい顔だ。




「ソラ、ちゃん?」
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