一途な小説家の初恋独占契約
プロローグ
梅雨の晴れ間の7月初め、私とジョーは、最後のお出かけをした。

いつも一緒だった妹は、風邪で母とお留守番。
父は、急な休日出勤。
家族で出かけるつもりだったから、友だちもいない。
一日中ジョーと二人きりなのは、その日が最初で最後だった。

ジョー――ジョゼフ・早見・オリヴェイラは、中学3年生。
私と同い年のアメリカ人の男の子だった。

中学1年生の頃から、学校の授業の一環で私と文通をしていたジョーは、これも学校行事として行われたホームステイで、我が家にやって来た。

初対面の、それも外国人の男子とうまくやっていけるかなという心配は、全くの杞憂だった。
私と同じくらいの背のジョーの体重は、明らかに私より軽く、ヘーゼルカラーの私より淡い瞳を繊細に揺らす姿は、男の子だという感じがしなかった。

お母さんが日本人のジョーは、簡単な日常会話なら日本語でできた。

けれど、とてもシャイで、私や家族とはすぐに打ち解けてくれたものの、学校ではずっと心細そうにしていた。
2年間文通を続けて、気心の知れている私を頼りにしてくれ、ことあるごとに「汐璃」と、小さく私の名前を呼んだ。

そのジョーも、2週間の滞在で私以外の友だちもでき、私の入っているESS部の活動にも積極的に参加してくれた。

中学校も3年目。
部活の引退や高校受験のプレッシャーも、まだ差し迫っていなかった。
退屈していた生活を、ジョーの存在は激変させた。

朝起きて、ご飯を食べて、学校に行って。
授業を受けて、部活に出て、家に帰って。
テレビを見て、宿題をして、妹と遊んで。
ジョーがいるだけで、日常の全てが新鮮だった。


それも、明日までのこと。
ジョーは、明日帰国してしまう。
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