一途な小説家の初恋独占契約
秘密の願い
私が身支度をし、荷物をまとめている間に、ジョーは各所への連絡を済ませていた。

どう連絡したのか、警察がやって来て、巡回を強化すると約束してくれた。

警備会社は、防犯設備を設置し、何かあればすぐ駆けつけてくれるのだそうだ。
ジョーが、自分のお金で勝手に申し込んでしまったから、後で実家に連絡しておかなくちゃ……。

会社には、なんて説明すればいいのか悩んでいたのに、ジョーは、さっさと会社にも連絡してしまった。

騒動を話すと、意外にも電話口では労わられただけで、午前中は休みにしてくれた。
その間に、警備会社が防犯設備の設営をしてくれることになった。

ジョーは、取材があるので、会社に行かなくてはいけない。

「汐璃を、一人で置いていくわけにはいかないよ」

そう言ってくれるのは有り難いけれど、取材をキャンセルされても困る。

玄関で押し問答していると、門の開く音がした。

ジョーと顔を見合わせる。
また、誰かが家の敷地に勝手に入ってきてしまったのだろうか。

「おっはよう!」

妙に明るい声に振り向けば、秋穂があっけらかんと笑っていた。

「秋穂!?」
「何だか大変だって言うから、助けに来たよ。ジョー先生は、ご予定が詰まってますから、会社に行ってくださいね。タクシーを待たせてあるので」

秋穂が、ジョーのカバンを勝手に持ち出し、タクシーに入れてしまう。

「……そうは言っても」
「仕事に穴を空けるような人、汐璃は嫌いじゃないかなぁ」
「でも、こんな状況で汐璃を一人にするわけには……」
「だから、私がいますって。諸々片付いたら、すぐ先生の元へ連れて行きますからね」
「……汐璃」

心配そうなジョーに、苦笑する。

秋穂の勢いに押され、私も随分元気が出てきたようだ。

「秋穂の言う通りだよ。色々ありがとう。また後でね」
「ほら、早く行かないと遅れますよ」

渋るジョーを、最後はタクシーに押しこめるようにして追い出してしまった。

名残惜しそうな視線を乗せ、タクシーはすぐに姿を消す。

「……さて、汐璃。話を聞かせてもらおうか」
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