一途な小説家の初恋独占契約
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大塚出版の資料を、寺下部長に送っても良かったのかな……。
清谷出版の社員としては、正しいことをしたと言える。
ジョーが、見て良いと言ったのだから。
でも、個人としては、どうすれば正しいんだろう。
このまま、ジョーに言われるがまま、ただ付き従っているだけで良いのだろうか。
昨日一日で思い知ってしまった。
私のペンフレンドだったジョーは、今や世界的なスターになってしまったのだ。
何もできない私が、のこのこと傍にいて良い相手じゃない。
そんなことを悶々と考えていたら、全然寝つけなった。
明け方近くになって、ようやくうとうととした。
今日も早く起きなきゃいけないのに、瞼が重い……。
「……汐璃? 汐璃、寝てるの?」
「……」
「そろそろ起きないとまずいだろ? ドアを開けてもいい?」
「ん……?」
何かが遠くに聞こえるけれど、全然眠った気がしない。
まだ、夜中のはず……。
「汐璃、開けるよ?」
「ん……」
耳を覆って、寝返りを打つ。
「汐璃。部屋に入ってもいいの? ……入るよ」
大きな溜め息と、足音が聞こえる。
シャッと勢い良くカーテンを引く音が聞こえて、瞼にチラチラと日が差し込んだ。
……え。
今何時?
ガバッと起き上がった私に微笑んだのは、ジョーだった。
「おはよう、汐璃。もう7時だよ」
「え……っ」
いつもは、6時半には起きている。
慌ててベッドから出ようとした私の前にジョーが立ちふさがった。
「ひゃ……っ!」