王子様とハナコさんと鼓星


うちの会社、空きあるよ。そんな軽い話から詳しい事を聞くととても良い条件だった。

地元とはかなり離れる事になるけれど、高級ホテルという事もあり給料が高い。ボーナスも出る。残業なしできちんとした週休二日制。


そしてなによりも嬉しいことは、毎月10000円で入れる従業員寮があること。魅力的な話に二つ返事で返答。彼女を介して面接をする事になった。


フルタイムの契約社員として席が現在空白なのは施設管理部の清掃部で客室担当のハウスキーパー。あとはパントリー部門の接客スタッフだった。


無論、後者に希望を出して話が進んでいたのだが、入社前日に入寮のため部屋の鍵を受け取りに行った際、支配人に呼び止められた。


ホテルの地下にあるミーティングルームに案内されると、申し訳なさそうに頭を下げられる。



「客室清掃部のスタッフが急病のため、長期休暇を取る事になり人手が足りなくなった。なので、村瀬さんは新しい人が見つかるまで客室清掃部での業務を頼みたい」と。
< 4 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop