優しいさよなら
大好き


スマホのバイブの音で浅い眠りから覚めた。

ベッドのヘッドボードに2つ並べて置いたスマホの1つが暗闇の中、淡い光を放つ。



見たらダメ。

見たら絶対傷付くことが分かっているのに、それでも視線が引き寄せられる。



メッセージが届いたことを知らせる通知。

差出人は『大場佐喜子』



隣で眠る人は気付いていない。



『帰国日が決まりました』


自分の、呼吸が、数秒止まる。





高山くん、




良かったね。
2年も待ったんだもんね。



ごめんね。


貴方の寂しさにつけ込んだりして。


「・・・ん・・・千紗・・・?」


高山くんが半分夢現な状態で、わたしの名前を呼ぶ。そっと身体を起こしたつもりだったのに。


「ごめん、まだ夜中。まだ寝れるよ」


身体を倒し、温かい布団にもぐりこんだ。


するりと大きな手が伸びてきて、頭を抱えられて引き寄せられると、また健やかな寝息が聞こえてくる。


長い筋肉質な手足。

わたしより少し温かい肌。

スーツを着た姿は細身なのに、しっかりスポーツしてた人の身体なんだよね。

158cmのわたしと、ちょうど20cm違う身長。



『あと2cmあったら180だったのにな』

『え、充分高いやんか』

『なんかイイ男の条件って180cm以上ってカンジしねえ?』

『なにそれ、どこ常識?』



高村千紗と高山基(たかやまもとい)。

入社したばかりの4年前の4月。

新人研修で隣の席になったときに交わした会話。

高山くんの言葉なら何でも全部覚えてる。
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