優しいさよなら


「ちょっとみんな時間くれるか」

部長が言い、みんなが部長の周りに集まった。

「大場がロンドンから戻ってまたウチの部で働いてくれることになった」

「またよろしくお願いします」

2年前より輝きを増した佐喜子さんが目の前にいる。

高山くんが嬉しそうな笑みを口元に浮かべた。


心が徐々に凍り始め、黒く染まっていく。


「あとな、高村!」


部長に手招きされ、みんなの前に出た。


「急なんだが高村が来週から営業部に行くことになった」


驚きの声があがるのを聞きながら、震える手を握りしめ、ニッコリする。


高山くんと目が合うと、驚きを隠しもせず、じっと見つめられた。


「今までお世話になりました!営業部でも頑張ります!」


高山くん、ごめんね。

これで終わりにするね。




「残念だなあ、千紗ちゃんとまた仕事できると思ってたのに」


「佐喜子さん、すいませーん。なんかわかんないうちに決まってしもて」


「でも千紗ちゃんなら営業でもやれるよ、コミュ力高いし、頭いいし」
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