優しいさよなら


「高村、おはよ」

「高山くん、おはよ」

良かった。
タッチの差だ。


仕事がやりにくくなるからと、秘密のお付き合いのわたしたち。



『取り敢えずのカノジョ』は無様な醜態を晒す前に黙って消えましょう。



入社して直ぐの頃、 高山くんへの恋を自覚して、同じ部署に配属されて浮かれていたわたし。

ある日お昼ご飯に行く前に午後の会議で使う書類をセットしておくようにと言われ、会議室に向かった。


扉に手をかけたところで、中から聞こえてきた密やかな声。


僅かな隙間から中を伺うと抱き合う男女。


うわー・・・リアルオフィスラブだぁ・・・と興奮したのも束の間。


見覚えのあるグレーのスーツ。


スタイルの良い立ち姿。


『・・・佐喜子・・・』


2年先輩の美しい女性、大場さんを呼び捨てにする声。


愛しそうに長い黒髪を撫でる手。



頭を思い切り殴られたような感覚に、思わず足元がふらつく。



頑張って足を動かして、会議室から遠ざかる。



深呼吸して、落ち着こうとしたけれど、ドクドクと身体全部が心臓になったみたいだ。

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