元社長令嬢は御曹司の家政婦
トーストに、生野菜のサラダ、きれいな形の目玉焼き、それから、自分で淹れたコーヒー。

身なりがいつもきちんとしているだけでなく、朝食まで用意するなんて、どうして朝からそんなに余裕があるのかしら?この男は一体何時に起きてるの?


「この一週間で美妃が朝食を作れたのは、たしか一回だったな。これでは、家政婦とは言えない」


いつ寝てるのかも分からない、人間かどうかも怪しいあなたと違って、私には睡眠時間がたっぷりと必要なのよ!
私の完璧なお肌が荒れたり、つややかな髪がパサパサになったらどうしてくれるの?

あくまで冷静に嫌味を言ってきた秋人にムッときてしまった。


「私は誰かに合わせて生活するのが大嫌いなの。いえ、嫌いというよりもできないタイプの人間なのよ。
あなたから言われた仕事はきちんとやってるわ。いつやるのかは私が決める。
文句があるならあなたが合わせたら?」


カッときて一気にまくしたてると、秋人は肩をすくめて小さくため息をついた。


分かってる、分かってるわ。
私が間違ってることくらい分かってる。

もしも私が、自分の家政婦に同じようなことを言われたらはっ倒したくなるもの。はっ倒すまではしないまでも、まず間違いなくクビね。

使うものと、使われるもの。
雇い主と従業員。

この間柄には圧倒的な差があり、立場をわきまえなければいけないことは分かってる。


だけどどうしても、この私が使われる立場だなんて受け入れられない認められない。認めたくないのよ......!
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