元社長令嬢は御曹司の家政婦
「私が、ちゃんと見てなかったから......、本当は、ずっと苦しかったのかもしれない。どうしよう、このまま......」


落ち着いて何があったのか話すように言われたけど、全然落ち着いて話せなくて、意味不明なことばかりを繰り返してしまう。

だって、どう考えても私のせいでしょ? 

ずっと何不自由なく生きてきて、嫌なこと面倒なことなんて誰かに丸投げすればいいと思ってたけど......。

「仕事」や「責任」は誰かに丸投げできても、「命を救うこと」は目の前にいる私にしかできない。

皮肉なことに、生き物に目の前でぐったりされて、初めて自分の責任を実感した。


「いいか、落ち着いて聞くんだ。
大丈夫、きっと助かる。
動物病院に電話しておくから、すぐに連れていってほしい。なるべく早く帰れるようにはするけど、今すぐに帰ることは難しいから、だから俺の代わりに頼む」


自分でも何を言ってるのか分からなかったのに、それでも秋人は大体把握してくれたらしい。

冷静だけど、いつもよりも優しい声が電話越しから聞こえてきて、ようやく少しだけ冷静になれた。

しっかりしなければいけない。
もう丸投げできる人は誰もいない。
私が、しっかりしないといけないんだ。

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