副社長と秘密の溺愛オフィス
「君がやるしか、ないな」

「え? 今なんておっしゃ――」

「今は君が俺なんだから、君がやるしかないだろう?」

「わ、わたし、無理ですっ!」

 どう考えてもやっていく自信がない。わたしは即座に断った。

「無理でもなんでも、やるしかないだろ。さっきから言ってるけど、俺たちはこのまま前に進むしかなんだ」

「そんな……」

 そう言われてもすぐに覚悟できるわけはない。彼の肩にのっている責任の重さにわたしは堪えられそうにない。

 目を伏せて絶望に打ちひしがれるわたしの肩に、副社長がポンッと手を置いた。

「なぁ、俺たちずっとふたりで仕事をしてきただろ。今からだってそれは変わらない。ずっと側についてるから、そんなに悲観的になるな。よかったな、俺は秘書としても優秀なはずだ。なんせ、副社長の仕事が全部頭に入っているんだからな」

 彼は人差し指で自分のこめかみをトントンと叩きながら、わたしにウィンクをした。

 その表情を見て悲観的な状況なのにもかかわらず、肩の力がフッと抜けた。

 みかけは完全に自分なのに、自信に満ち溢れるその姿はわたしの知っている副社長そのものだ。

「とにかく、元に戻るまではなんとかやっていくしかないだろう。どんなことがあっても」

 副社長の言うとおりだ。それ以外の方法を思いつかないのだから、今できることで最善を尽くすしかない。

 それにわたしはひとりじゃない。

副社長はいつもどんな大変なこともバイタリティを存分に発揮し、乗り越えてきた。

 そんな彼と一緒なのだ。なんとか時期がくるまでやりとげるしかない。

 ふたり真剣な目で見つめ合う。そこにはこれまでのふたりなにはなかった、新たな絆が感じ取れた。
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