クールアンドドライ
 その車が走り去っても、ずっとそっちを見ていた。
軽くクラクションが鳴った音に気づき、音の鳴った方を見ると、母の軽自動車がロータリーで停車していた。
慌てて車に乗り込んだ。

 久しぶりの実家だが、ささっと夕飯を済ませて、自分の部屋に引きこもった。

 あんな課長見たくなかったなぁ。
女の人と、腕を組んでた。
笑ってた、仲良がさそうに。
 
 キスしてきたくせに・・
あれから、まだ1ヶ月しか経ってないのに。
どういうこと?
もう、心変わり?
あ~あ、私が何も返事しなかったから、課長はあの人を選んだのかなぁ。
ベッドの上で悶々としてると、お母さんの「お風呂あいたよー」という声が聞こえてきた。

 お風呂に入っても、スッキリしない。
はぁ~、何でここまで振り回されているんだ?

 なんだかモヤモヤしたままキッチンに向かい、冷蔵庫からお茶を取り出した。
お茶の入ったコップを持って、リビングのソファーに座った。
 はぁ~、思わずため息がでる。
すると、座布団の上に座っていた母が、「なんかあったの?暗い顔して。」と聞いてきた。
「うーん、なんかね、見たくないものを見てしまったって感じ。」
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