運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
人前で悪魔的キス


病院に着くと、ただちに緊急手術が行われた。

救急車に同乗していた私はひとり、オペ室の前の廊下に取り残され心細かったけれど、やがて駆け付けた父の顔を見ると、張り詰めていた気持ちが少しだけ緩んだ。


「お父さん……早苗先生のご家族は……?」

「……いや、彼女はすでに両親が他界していて、身寄りがないんだ」

「そう、だったんだ……」


こんな時に、頼れる身内がいないなんて……。早苗先生、今までもたったひとりで病気の不安と戦っていたんだ。


「大丈夫だよ美琴。藍澤くんが執刀しているんだ。俺たちは、信じて待とう」

「うん……」


父に肩を抱かれて、私はこくりと頷いた。

永遠にも感じられる長い時間が過ぎ、ようやくオペ室へ続く扉の頭上にある“手術中”のランプがふっと消灯した。

早苗先生が搬送されてから、四時間以上が経過していた。


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