運命的政略結婚~白衣の悪魔に魅入られて~
根気のない私が、自力で就職活動をしたのはほんの少しだけ。
結局は父の神鳥総一郎(かんどりそういちろう)が院長をつとめる病院に、父の口添えで就職させてもらうことになった。仕事の内容は資格なんて関係なく、副院長である女性の秘書業務。
まぁそもそも家政学部に行っていたのだって親の勧めで、花嫁修業になるんじゃない?的な軽いノリだったし、ちょうどいいんだけどね。
「美琴はお父さんの病院だもんねえ。気楽なのが一番いいじゃん、いろいろ融通ききそうで羨ましいし」
「そうかな。院長の娘だなんて、逆に扱いづらく思われそうでいやだけど」
「あー、まあ、それもあるかもね」
そこは否定してよぉ、と真帆に絡んでいると、バッグの中で携帯が鳴った。
取り出してみると、父からの電話だ。向こうは今、夕方六時ぐらいだろうか。仕事が早く終わったのかな? 私は歩きながらスマホを耳に当てる。
「もしもし?」
『おお、美琴か。確認なんだが、帰ってくるのは明日でいいんだったよな?』
聞き慣れた父の渋いかすれ声。私は頭の中で時差とフライト時間との計算をして、うん、と答えた。