眠らせ森の恋
 今日はなにやって、社長を困らせた? とか実に楽しげに訊いてくる。

 最早、スパイうんぬんは関係なく、日々の楽しみとして訊いているような気がするのだが。

 しょうがないなあ、もう、と溜息をつき、つぐみは言った。

「いや、実は私がその――」

 思いついても、口に出すのは抵抗があったが、これ以上つつかれたくないので、口にする。

「つっ、付き合ってる人と西和田さんがお友だちなんですよ。
 それでです……」

「ああ、そうなの」
と英里は言った。

「それでいろいろあるわけか。
 でも、あんたの彼氏って誰なの?

 この会社の人?」
と訊かれたが、しゃ、社長のことを付き合ってる人とか言ってしまいましたよ、と動揺していると、

「ちょっと訊いてる?」
と頬をひねられる。

 いててててて、と思いながら、
「な、内緒ですっ」
と言うと、

「まあ、社内恋愛なら秘密にしといた方がいいわよ。
 破局したとき、あいたたたってなるからね」
と言ってきた。

 ……何故、破局すると決めつけますか。
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