眠らせ森の恋




 母親たちが帰った広い家の中は静まり返っていて、つぐみはなんだか落ち着かなかった。

「お、お茶でも淹れましょうか」
ととりあえず、向かい合って座っていたつぐみはソファから立ち上がる。

 特に奏汰からの返事はなかったが、淹れてきた。

 奏汰の前に湯呑みを置き、沈黙している彼に、なにか言った方がいいかと思い、
「そ、粗茶ですが」
と言ってみた。

 奏汰は、こちらを見ないまま、淡々と、
「うちの茶だ」
と言う。

 ……そういや、そうでしたね、と思いながら、そのまま、二人で黙って茶を飲んだ。

 気まずい……。

 西和田さんか、田宮さんにでもいいから、電話したい気分だ、と思ってしまう。
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