お稲荷様のお呼びです! クリスマス超短編


あまりの綺麗さにじっと眺めていると、ふわっと肩に暖かいものがかけられた。


何かと思って我に返れば嘉さんが腕組みしたまま、私の横にいた。


暖かいと感じたのはどうやら嘉さんの掛物だったらしい。


「こんな場所にいたら、馬鹿でも風邪を引くだろう」

「ば、馬鹿とは失礼な……その、嘉さんこれって……」

「今日は人間界では、クリスマスとやらで贈り物を貰う日なんだろう。我々の住む世界でも、今日だけにしか咲かない花がそれなんだ。たまたま見つけたから持ち帰って来たまでだ」

「それを……私に?」


そう聞くとどこか罰の悪い顔をしたかと思えば、くるりと向きを変えて廊下を歩き始める。


「勘違いするな。ただ花言葉がお前にぴったりだっただけだ」

「……嫌な予感」

「その花の花言葉は、鈍感。何かと鈍いお前にはぴったりだろう」

「もーちっとも嬉しくない!」


私とは真逆に嬉しそうに尻尾を横に振る嘉さんに舌を小さく出すけれど、誰かに何かを贈ることができるのかと一人関心したのだった。


一日しか咲いていられないのなら……今日は、外の空気をめいいっぱい吸っておいで。


綺麗な花びらをそっと撫でで、雪の積もる敷石の上において、少し眺めてから鍋のいい匂いがする温かい部屋へと足を向けた。






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