美意識革命
「あー…森さん、もしかして天才ですか。」
「え!?なんで天才…?」
「…自分がとてもバカだったことに気付きました。」
「え…ちょっと待ってください。どういうことです?」

 森の顔は困っている。全く状況が飲み込めていないという顔だ。

「…いい女って、顔じゃないですよ。顔だったらもう生まれつきどうしようもないじゃないですか。」
「…そうですね。」
「いつの間にか囚われちゃってるものなんですね。いわゆる女は可愛く、綺麗であれみたいな…刷り込み?洗脳?別に大して可愛くも綺麗でもないのに、彼氏ができて周りに褒められたからって調子に乗って、変な美意識だけ高まっちゃって…だから空回りしました。」
「そういうところに落ち着いたんですね。」
「え、変ですか?」
「いいえ、全く変じゃないです。」
「そこに自分がある人、…その通りだと思います。そういう人を目指します。ジムも頑張りますけど。見た目ってわかりやすく自信になってくれるから。」

 森は優しく微笑んだ。そして、残っていた生ビールを飲み干した。

「九条さん、ますますパワーアップしちゃいますね。」
「それが目的です。」
「見返すってところはどうしますか?」
「…もういいですかね、そこは。見返しようがないですもんね。元カレに彼氏を会わせることもできないですし。」
「え、彼氏!?」

 突然の森の大声に目を丸くしたのは由梨だった。

「す、すみません。あの、彼氏、できたんですか?」
「まさか。こんな可愛げのない女を彼女にしたい人なんて稀なんですよ。」

 森が大声を出すなんて珍しいというか、初めて見たかもしれない。
< 22 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop