極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「怒らないんですか?」
2人分のコーヒーカップを用意しながら、疑問に思ったことをオブラートに包むこともせずそのままに尋ねた。
遠回しに言っても相沢さんの本心が見えない気がしたから。

「いや…」
少しの間を置いて、相沢さんが言葉を続けた。

「内心は結構頭にきてる。いつもみたいに笑う余裕がないくらいには」
決して声を荒げているわけではないのに、真っすぐに向けられた相沢さんの瞳には言葉にし難い迫力があった。

「でも、君が茜の嫌がることをするとは思えないから」
「っ!」
あとに続いた言葉に、思わず息をのんだ。

あぁ、こういう男か…

心の中でそう呟きながら、一気に気持ちが落ち着いていった。
敵わないことを思い知らされて、挑戦的だった自分がだんだん馬鹿らしくも思えてきて。

「すみませんでした。試すようなことをして」
素直に口からこぼれ出た俺の言葉に一瞬目を丸くした相沢さんが、ふっと表情を和らげた。

張りつめていた空気が少し緩んで、止めていた手を再び動かす。
入れたコーヒーを相沢さんの前に置いて、自分も椅子に腰を下ろした。
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