サワーチェリーパイ 6ピース
「遅いよーっ! 」
「ごめ……でも、もうギブアップ」


自転車を押しながら坂道を登る僕を振り返ったルナちゃんは、坂道の一番上で待っていてくれる。


「駿府君、勉強だけじゃなくて運動もした方がいいよ」
「うん……」
「今日のお礼にバトミントンでもしよ」
「え? 」


いきなりの誘いに、どう返事をしていいのか分からなくなった僕は、困って空を見上げた。


夜空に浮かんだ満月は、やけに眩しい。


「日曜日、ヒマなら天荻公園に10時ね」
「うん……」
「じゃあ、この坂下りたらすぐだから。さよなら」


満月の下へ僕を置き去りにして、ルナちゃんは坂道を降りて行く。


不思議な夜だった。
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