君を忘れるその日まで。
「彼女からの手紙、そんなに溜まったんだね」
「毎日届くから、閉まっておく場所に困ってるんだ」
「その割には嬉しそうな顔してるけど。しばらく家に帰れないから、彼女が恋しくなる前に手紙を読んでおこうと思ったの?」
「そんなこと思ってないよ。ただ、少しでも思い出せるように見ておこうと思っただけ」
「ふぅーん?」
何かを企むような顔の佐城さんに手紙を差し出すと、「見ないよ」と笑顔で返される。
「私は、祐樹くんと手紙の彼女の逢瀬を覗き見るような野暮な女じゃないからね」
「今まで興味津々で見てた人がよく言うね」
「過去の私と今の私は違うの。私は読書でもしてるから、祐樹くんはゆっくり手紙を読んで」
「そうだね、ありがとう。じゃあ、君の優しさに甘えて読むことにするよ」
隣で本を開いた彼女にひと言伝えてから、俺は手紙を開いていった。