コガレル(番外編)~弥生ホリック~


***


 2月。
 なんの前触れもなく圭さんから、東京ー熊本の往復航空券が届いた。

「今、大丈夫ですか?」

 チケットの入った書留を受け取るとすぐに、圭さんに電話をかけた。

「もしかして届いた?」

「はい、受け取りました。私の誕生日ですね?」

「俺はそっちに行けそうにないから、弥生が来て」

 圭さんと知り合ってから初めての誕生日。
 サプライズが得意な圭さんだから、もしかしたら本当は熊本に来ようと画策したのかも知れない。

「行きます。圭さん、ありがとうございます」

 土曜日だから、私の仕事は休み。
 圭さんに会える。

「弥生…」
「はい」

 いつもと変わらずに、私の名前を呼ぶ声が耳に優しい。
 ラインも楽しいけど、やっぱり声の方が温かみを感じる。
 それなのに電話の向こうでなぜか歯切れの悪い圭さん。

「…ごめん、もう行かなきゃ。切るわ」
「お仕事、頑張って下さい」
「ハイハイ。じゃあね」

 電話は圭さんによって切られた。


 圭さんが何か言いかけたのは、もしかしたら…あのことかも知れない。

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