人面瘡
沙和が軽い感じでそう言い、制服の胸ポケットに入れてあったペンをあたしに差し出して来た。


「そうだよね。やるだけやってみようかな」


あたしはそう言い、沙和からペンを受け取った。


ガーゼの上に、小さな文字で雄生の名前を書いていく。


本人やクラスメートにバレないように書いたため、文字は潰れてしまって読み取れない。


こんなので大丈夫だろうか。


そう思いながら沙和にペンを返したその時だった。


雄生が友人の藤井孝彦(フジイ タカヒコ)と共に教室へと戻って来たのだ。


その様子にあたしと沙和が目を丸くした。


「うそ……」


驚きすぎて、思わずそう呟いてしまう。


「このジンクスは本物だね」


沙和も目を丸くしたままそう言ったのだった。

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