初恋 ー君がいてくれたからー
中学2年の2学期

出会い

私の名前は坂本好(さかもと こう)。

桜華(おうか)学園中等部の二年。

好なんて名前、本当に嫌だ。

読み方は男の子みたいだし、漢字は「好き」って字だし、なんかださい。

そんな名前をからかってくる男子達も嫌い。

野菜も嫌いだし、虫も嫌。

そんな嫌いなものだらけの私が好きなのはバスケ。

小さい頃にお母さんに誘われて入団した、ミニバスケットボールスポーツ少年団、通称ミニバスがきっかけでバスケは私の唯一の趣味になった。

あんまり才能はないみたいで、全然上達しないけどね。

中学に入ってからもミニバスのメンバーと一緒に部活を楽しんでいる。

ある日の放課後、職員会議で午後練がなしになっちゃったから、先生に頼み体育館を開けてもらった。

いつも一緒に帰ってる美奈には先に帰ってもらった。

パシュッ

一人しかいない体育館にとてもキレイな音が響く。

私はこのゴールを決めた時の音がすごい好きなのだ。

ガラガラガラッ

ん?体育館の扉が開いた。

「あの〜、体育館使っていいんすか?」

赤色のラインが入った上履き。一年生だ。

見たことのない顔だけど…誰だろう?

いや、まぁ私はほかの学年の人なんてほとんど覚えていないんだけどね。

「あーえっとね、バスケしたかったから特別に開けてもらったの。勝手に使っていいわけじゃないんだけど…」

「オレもしていいっすか!?てか、一緒にしましょうよ!」

はい??一緒に?

初対面の人とバスケするなんてこと今までなかったんだけど。

「いいじゃないっすか!やりましょうよ〜」

「んー、分かった!いいよ。5時までしか使えないからね」

「了解です!」

この人の名前は荒木悠也くん。バスケ部の一年生らしい。

男バスは隣で練習してるのに全然気づかなかった…。

「先輩!名前なんていうんですか??」

かれこれ、二時間近くバスケをしていてもうすぐ5時なのに私は自分の名前を言うのを忘れていた。

「坂本だよ」

名前なんて言いたくない。

「坂本って、苗字でしょ?名前っすよ!」

「いや、苗字で呼んでくれて構わないから」

「オレ名前で呼びたい」

はぁ?なんでよ。苗字でいいって言ってるのに…。

「…ぅ」

「はい?」

「こう!好きって書いて好!」

もう、言いたくなかったのに。

「可愛い名前っすね!」

え?可愛い?いや、聞き間違い…。

「好きって書いて好なんて、めっちゃ可愛いじゃないっす

か!名は体をあらはすって言うし、好先輩も可愛いっす」

「大丈夫?頭」

「なんでっすか!可愛いっすよ、好先輩は」

なんなのこの子。

恥ずかしげもなくそんな事をさらっと言って…。

いや、恥ずかしげもないからたいした気持ちこもってないか。

「あ、好先輩。もう5時ですね。帰りましょっか」

気づけばもう空は、真っ赤に染まっていた。
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