私に光を〜あなたを信じるために〜
予想は的中した。
朝目覚めるとお父さんとお母さんが騒いでいる。おかしいな。
慌てて部屋を出ると、お父さんとお母さんの目が私を見る。
「どうしたの?」
そう聞くとお母さんは答えた。
「駿が…駿がいないの」
驚きとかよりも大きい感情が出てくる。声も出ない。身体中は震える。動けない。だってそんなこと言われたって私、わからないし。

それでも私はパジャマのまま家を飛び出す。

人の目も気にせずただただ走り続ける。駿、何も言ってくれないからどこに行ったとか全くわからないよ。
でもきっと今は私しか探し出すことが出来ないと思う。だから、私が探し出すんだ。
息切れ関係なし。死んでも構わない。その勢いで駿を探す。

「お姉ちゃん!?」
反射的に私の顔はその声のする方を向く。
「駿っ」
走って走って駿の小さな体に抱きつく。駿が嫌がるのもお構い無し。
「どこ行ってたの、ばか」
心配と不安が吹き飛んでホッとしたのか涙が流れた。
駿は何にも返事してくれないから私は抱きついてた体を離して駿の両肩を掴む。
「家に帰ろ」
ぐしゃぐしゃな顔を少しでも良くするために微笑んだ。けれど、駿は…
「もう帰りたくない…帰ったら幸せなんて言葉、どっかいっちゃうんだもん」
って。わかってる。わかってるよ。
「私が駿を幸せにするから」
自然に出た。
「絶対?」
「うん、絶対。約束するよ」
私だって駿がいないと不幸せだからね。
駿の左手を握りしめて家までの道を歩く。沢山の思い出話をしながら。

家の前にはお父さんとお母さんがうろうろしていた。そして、私たちを見ると私と同じように涙を流してこちらへ来た。
「駿。ごめんね…自分たちで勝手に進めちゃって」
お母さんは笑顔じゃなく、悲しい顔をして駿を抱え込む。
「ごめんな、駿」
お父さんも駿を抱え込む。
私はそれを見て、今、駿は幸せかなって思ったりした。そして、私が幸せにしなくても駿にはいつか幸せがやってくるものだと思った。私は誰からも必要とされていないんだから。
駿が顔を上げる。私に向かって幸せいっぱいの笑顔をくれた。それだけで私も幸せいっぱいになった。
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