僕は桜に恋をした。
7.当たり前が幸せ

「変わって、ないね…。」



そう言って彼女は笑った。




これだ。




ずっと、



ずっと僕がみたかった笑顔。





『先生!もう時間だから私帰るね!』



『わかった。じゃあね。』




少女は宮川にそう言ってから僕にも手を振ってから帰った。




「あのさ、ちょっと話せる?」




僕がそう言うと彼女は頷いて、近くのベンチに座った。



僕は少し間を開けて座った。





聞きたいことは山ほどある。




なのに、何から話せばいいから分からない。




「医者になったの?」




僕が悩んでると彼女が先に話しかけて来た。




「うん。」




「普通にサラリーマンになってると思ってた。」




「だって、あの時言ってたじゃん。人の役に立つ仕事についた方がいいって。」




「まだそんなこと覚えてたの?」




そう言って彼女は笑う。




「あのさ…」



プルルルッ!プルルルッ!




「ちょっとごめん。」



僕が話しかけた時、ちょうど宮川の携帯が鳴った。




「ごめん、なんだった?」




「ううん、なんでもない。」





「ごめん、会社に戻らないと…。」




「そっか。」




なんで、あの日居なくなったの?





そう言おうとした。





でも、なぜか聞いたら聞けない気がした。




「ねぇ!」



「ん?」




「また…、会ってくれますか?」





彼女は少し経ってから笑顔言った。





「もちろん!」









< 49 / 66 >

この作品をシェア

pagetop