《クールな彼は欲しがり屋》
どうしたって後悔するしかない状況だ。
新しく自分の上司になった人が、一年前に一夜を過ごした人だなんて。どう考えてもツイテない。それは、沢田課長の気持ちも私と同じはずだ。

一夜限りで終わりにする予定だった女に再び会社で出会うことになるなんて、ツイテナイ。そう思っているはずだ。



「沢田課長....すみませんでした。私が異動したせいでなんか変なことに巻き込んで」
ここは、謝るしか無いような気がした。

あの日、失恋話を散々きいてもらって、滅入っていた気が救われたのは確かだ。もう二度会わない人だから、気楽に話せた。

そのあとは楽しんで飲めるくらいにまで私の傷んだ心は回復した。

それもこれも、あの日私の隣に座ってくれた沢田課長のおかげだ。




「あの、沢田課長」
見上げた沢田課長は、あの夜に見た時と同じでシャープな顎のラインをしていた。

今日、沢田課長に偶然に出会った時から考えていた。
今日は穏便に過ごせたとしても、明日は?その先は?

黙っていたとしても、どうしたって、あの夜のことを思い出してしまう。

自分から散らしておいてなんだが、どうせなら、きちんと整理しておきたかった。


「あの夜の出来事は忘れてもらえませんか?」

沢田課長の喉仏が静かに上下した。
< 20 / 106 >

この作品をシェア

pagetop