イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

拓海は冷や汗をかいてうつむき続ける私に向かっておおきなため息をつくと、手にした箸でお皿にのった物体をつっつく。

私たちの目の前にあるのは、『酢豚になる予定だったもの』だ。

昔から拓海が、料理の中に入っているパイナップルと、ドロッとしたソースの食感が嫌いだと言っていた酢豚を作ろうとしたはずなのに、出来上がったものはとても料理とは言えないしろものだった。

素揚げした油が高温すぎたのか固く縮んだこげ茶色の豚肉に、下茹でしなかったためになかなか火が通らずカチカチのままのニンジン。
ニンジンを柔らかくするために長時間炒め続けたせいで原型をとどめていないぼろぼろのパイナップルに、あちこちダマになりスライム状に固まった餡。
ソースに使った酢の分量が多かったのか、つんと鼻につく酸っぱいにおいが部屋中に漂っている。

これは作った本人の私でさえ、口に運ぶのをためらうレベルだ。

嫌いなものを作ってうんざりさせる作戦だったはずが、ただただ料理を失敗してとんでもないものを作ってしまった。


 
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