イジワル同期の独占欲に火をつけてしまいました
 

「同じ部署の総務のやつ?」

そう問われ、肩から力が抜けた。
よかった。拓海のことが好きだとはバレてないようだ。

「ちがうよ。総務じゃなくて……」
「じゃあどこの部署? 同期の男?」
「えっと……」

同期って言ったら、拓海のことだってばれるかな……。

畳みかけるように聞かれ、なんとか誤魔化そうとその場しのぎの嘘をつく。

「ど、同期じゃなくて、いつも優しくしてくれる先輩なんだけど……」
「お前、仲のいい男の先輩なんているのか?」
「うぅ……っ」

苦し紛れの言葉にするどく突っ込まれ、思わず言葉につまる。

確かに、頻繁に他部署との交流会がある会社だけど、地味で人付き合いの下手な私がそんな飲み会に参加するわけがないし、他部署の先輩と親しくなる機会なんてほぼない。

「た、拓海には関係ないし」

ここは下手に嘘を重ねるよりも、黙秘権の行使だ。
そう決めて顔をそらすと、運転席からため息が聞こえた。



 
< 74 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop