彼の甘い包囲網
「あの、私、正直に言って奏多の行動の理由とか気持ちとか……色々なことがよくわからないんです。
私はいつもうまく言えなくて、何が正解なのか教えてほしいくらいで……」



……私は初対面の奏多のお姉さんに何を意味のわからない、馬鹿な話をしているのだろう。

言っている傍から自己嫌悪に陥る。

千春さんは奏多によく似た長い睫毛に覆われた目をパチクリとした。


「……ね、楓ちゃん。
私達女同士だし、よかったら悩んでいることを話してくれない?
私が奏多の姉、とか考えずに。
年上の女友達として。
私、楓ちゃんとお友達になりたいわ」


千春さんの優しい眼差しに包まれて。

私は今までのことをノロノロと話した。

奏多が頼み事をするくらい頼りになるお姉さんなのだ、ということが私の警戒心をほどかせた。


「……はあ、成る程。
そこからなのね。
あの愚弟……全然ダメね」

「え……?」

「奏多が悪いわね。
アイツ本当に肝心なとこで……楓ちゃん、奏多には私からよく言って聞かせるからねっ。
……ねえ、楓ちゃん。
奏多のことはキライじゃない?」

ゆっくり確認するように尋ねられて。

その問いには、私は自信をもって頷いた。
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