「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
しばらくすると、汗が全身から噴き出して、息を吸うたびに喉から変な音が聞こえるようになってしまった。
なんて体力がないのだろう。
そんな自分にがっかりしながら、仕方なく足をとめた。

近くの電信柱に力なく寄り掛かり、必死で呼吸を繰り返す。
おろされた長い髪が首筋にべっとりと張り付いて気持ち悪い。
コンクリートでできた電信柱はほどよく冷たく、頬を摺り寄せると気持ちよかった。

そんなときだった。


「あれ? お前、美里じゃね?」


やけに軽快な声が、わたしの頭の中に響いた。
最初、幻聴だろうかと疑った。
だが顔をあげると、そこには声の主がいた。


「……御崎?」


弱々しく尋ねると、ああそうだと元気のよい返事が返ってきた。
これは夢だろうか。
衰弱しているわたしに神様が同情して、幸せな夢をプレゼントしてくれたのだろうか。
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