「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

「何言ってるの! わたしは、御崎を救うためにここに来たんだよ? それなのになんで、何もできずにもとの世界に戻らなきゃいけないの!」


思わず、御崎を怒鳴りつける。
御崎は一瞬驚いたように目を真ん丸くしていたが、次の瞬間には落ち着きを取り戻して、静かにこたえる。


「いいんだ。俺はもともと死ぬ運命だったんだから。それなのにお前が死ぬことはないだろ?」

それに、と御崎が続ける。

「何もできてなくない。お前は、俺を助けようとしてくれた。その事実は、俺の心にしっかりと刻まれてるから。ありがと、美里」


今日で何度目かの「ありがとう」。
いつもなら嬉しくて悶えているところだけど、今の「ありがとう」は最後の言葉になってしまいそうで。

怒りは消えた。
代わりに悲しみが現れた。


「やだ、御崎、ひどいよ……わたしは、御崎のいる世界じゃ生きられないんだよ?」


段々と潤ってくる瞳。
涙がこぼれないようにと一生懸命になりながら、わたしは叫んだ。
その叫びはあまりにも弱々しく、情けないものだったけれど。
< 62 / 100 >

この作品をシェア

pagetop