「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

「御崎、御崎やだ……! 消えないで! 行かないでよ!」


今になって最期ということを感じた。
幽霊のように足無しになってしまった御崎に駆け寄り、縋り泣く。


「泣くな、美里。これは仕方ないことなんだから。いい加減受け入れたら?」
「でも、だって、もう体の半分以上が消えてる!」


既に御崎の手と足は消え、腹部も消え去ろうとしている。


「御崎、御崎、死なないで、ずっとわたしの傍にいてよ!」
「美里……」
「っ……御崎、みさきぃ、だめ、だめだよぉ……」


わたしの言葉も関係ないというかのように、侵蝕は続く。
太陽も危機的状況に陥っているわたしたちを知らん顔して、なおも頭上で照り輝いている。
いつもと変わらず、消えそうな御崎とわたしとじりじりと熱する。


「あ……そういえば、美里、もとの世界に戻ったら、俺の部屋の、二番目の机――」


そんなとき、御崎が何かを思い出したのか、声をあげた。
だけどそれも許されないのか、全部言い終わらないうちに御崎の口も消えた。

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