放課後○○倶楽部
「ふむ……立体化には成功しているがやっぱり動かないか。これはまだ改良の余地があるな」

 そう言って足早に歩いて行くママッキーさんが――
「そこ、磁場が安定しない特殊な場所だから、色々とあるんだよねえ」
 小さく「ふふふっ」と笑いながらうしろ向きに去って行った。

「それじゃ、私は律子を保健室へ連れて行くから智樹は天才ちゃんを連れて行ってな」

 と、軽々と律子ちゃんを持ち上げて歩き出した和音さんは未だに座り込んだままのコハルを顎で示し、少し呆れた顔で歩いて行ってしまった。

 残された俺達は顔を見合わせて「立てるか?」「うん」と短く言葉を交わして和音さんのあとを追って保健室へ行く事にした。


 何が起こるのか分からないから現実は楽しい。

「食堂に行こうとしたところで、いきなり誰かにうしろから押さえられて……気付いたら、中庭にいたんです」
「そう……それで、どうしたんだ?」
「なんでだろうって思っていたら……切り株の上に女の子が立っていたんです」

 ぼんやりとした瞳で宙を見つめている律子ちゃんは和音さんの声に反応しているが、この世のものとは思えないほど儚くて今にも消え入りそうだった。

「女の子?」
「え、えっと……綺麗な黒髪で一〇歳くらいの女の子でしたけど」

 ため息のような息を吐き、複雑な表情を浮かべている和音さんは「そうか」と呟いて俯いていた。
< 128 / 161 >

この作品をシェア

pagetop