放課後○○倶楽部
 空になった珈琲カップを眺めていたら上機嫌のママッキーさんと半ベソ状態の律子ちゃんがやってきた。

「で、何の用ですか?」
「あっ……リッコーに見てもらいものがあって来たのを忘れていたさね」

 ポンっと手を叩いて白衣の中から昨日の装置――マトリクサーキット――を取り出したが、あの白衣の仕組みを聞いているのにあの大きさの装置が出てくるのが不思議で仕方なかった。

 しかし、そんな俺の思考を中断させるような事がまたしても起こった。


 ……その配線とテレビは何処から?


 何食わぬ顔で手に持ったケーブルを鼻歌混じりでマトリクサーキットとテレビを繋いでいるママッキーさん。

 もうマッドサイエンティストからマジシャンに転向した方がいいのではと思うほどの手際の良さで、部室の中にミニシアターが完成していた。

「これからリッコ―の恥かしい映像――じゃなかった。この映像をリッコ―に見てもらいたいのだよん」

 呆然として完成したミニシアターを見つめていた律子ちゃんは、言葉を発する事も出来ずに頷くだけで、俺は律子ちゃんの恥かしい映像って方が気になったけど、ママッキーさんの目配せを『今度見せてあげる』という俺なりの解釈して頷いていた。

「ではでは、いくよ」

 カーテンを閉めて薄暗い部室の中で機械の作動する音が大きく響き始め――
「これはマトリクサーキットに内蔵された録画装置『アレ見ちゃ(いや)ん』が記録した真実の映像である。諸君、心して見ろっ」
 相変わらずのネーミングセンスに閉口している俺達を無視して、妙なテンションで興奮しているママッキーさんの講釈を聞いている間に映像が流れ始めた。

「あっ、私です」
「そうだね。これは……中庭、みたいだけど」

 テレビに映し出されたのはローアングルから狙う隠し撮りのような映像で、間違いなく近くを通ればパンツが見えるだろう。

 そのカメラの前を横切っていったのは律子ちゃんを抱えてている数人の覆面とした男子の制服を生徒だった。
< 134 / 161 >

この作品をシェア

pagetop