放課後○○倶楽部
 だが、ここで『七曜学園殺人事件―カレーパンに秘められた愛と復讐の過去』なんてサスペンス劇場を繰り広げられても嫌なので、やっぱり止める事にしよう。

「和音さん、カレーパンを食べた犯人を探しましょう」
「さすがは智美。そう言ってくれると思っていたよ」

 クルっと満面の笑みで振り返った和音さんはどこから出したのか手には女子の制服を持っていた。


 ……もしかして、ハメられた?


 ハメるのは男の特権――おっと、下ネタに走ってしまったが、そう言えば先ほども俺の事を『智美』と呼んでいたな。

「……何か隠していますね、和音さん」
「さすがは智美ちゃん。察しがいいね――ちなみに、アレはサッシで、コレは冊子」

 と、上機嫌で窓ガラスを指差し、表紙に『魅惑のカレーパン 愛するあの人はカレーパンの匂い』と描かれた一冊の本を持ち上げた和音さん。


 ……理解不能なタイトルだな。


 そう思ったのだが和音さんの手に持った本に心奪われそうになってしまったが、和音さんの態度からして完全に何かを隠しているのは明白だと思った。

「はあ……で、何をすればいいんですか?」
「何って、カレーパンを盗んでいった犯人を探すんだよ」
「本気ですか?」
「本気も本気。これは私がカレーパン嗜好会と作り上げた最高の一品なんだ!」

 そう言って手に持っていた本を広げて『愛しのあの人もイチコロ 激辛ハバネルネルカレーパン』の頁を開いてテーブルに叩き付けていた。

 そこにはあの世界一辛い唐辛子をふんだんに使ったカレーパンの作り方が書いており、注意書きで「食べ過ぎには注意しましょう。次の日がありませんから」と物騒な文面が綴(つづ)られていた。

 思わず「イチコロってそっちの方かよ」ってツッコミをいれたかったが、和音さんが拳を振って話すカレーパンへの思いを聞いていると変なツッコミは命がないと判断した。
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