俺様外科医に求婚されました




「乾杯」


窓際にある八人掛けのテーブル席で周囲の様子に合わせるようにグラス同士を当て合うと、私は小さく息をつきながら店内を見渡した。

初めて訪れた、‘‘Elegance’’というダイニングバー。
その店内は、その名に見合ったとても優雅な空間だった。


広々としたフロアの一角にはグランドピアノが置かれ、見上げればシャンデリア、テーブルではキャンドルの炎が輝いていて、間接照明の暖かなオレンジ色は、綺麗な店内をより一層オシャレに際立たせていた。



「へぇーっ!名波さんすごいですね!不動産会社の社長さんなんて」

「や、俺なんて全然大したことないよ。佐倉は開業医だし、輪島は君たちが働いてる青葉総合病院の外科部長だろ?あと、まだ来てないけどそいつも超凄腕の医者だし」

「えー!皆さんすごいんですね!ね⁉︎すごいよね⁉︎」


隣に座っていた加奈にそう言いながらいきなり肩を揺すられ、ボーッとしていた私は慌てて自分の座っていたテーブルに視線を戻した。


「本当にレベル高過ぎじゃない?」


こそこそと耳元で囁く加奈。
私は当たり障りのないようひとまず小さく頷いて見せた。


レベル…ねぇ。
職業が不動産会社の社長だから?
お医者さんだから?それともルックス?

…社長さんはともかく、医者は…な。


目の前に座っている男性たち三人の顔を流し見ながら、私はぼんやりと窓の向こうに目を向けた。


< 2 / 250 >

この作品をシェア

pagetop