たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。

八年前。

私が高校一年生の時、クラスの副担任は新卒の若い男の先生だった。


『この問題の公式はこうなる訳だ! じゃあ誰か、この例題の答え分かる人いるかな?』

『せんせー。勢い余って黒板に答えまで書いちゃってますよー?』

『えぇっ⁉︎ 本当だ……!』


少しそそっかしいところが可愛かった。
いつでも明るくて、彼ーー白川先生は男女問わず生徒達の人気者だった。


特に女子生徒の中には、彼のことを恋愛対象として見ている人も少なくなかった。若くて、かっこ良くて、明るくて、面倒見が良いーーそういう人気もあったのも頷ける。


だけど私は、最初はそんな風に意識してはいなかった。普通に〝先生〟として見ていた。


それが変わったのは、一年生の十二月。

何となく、クラスの人達が私と口をきいてくれなくなった気がしていた。

だけど、今より人と話すのが苦手で口数の少なかった当時の私には、常に一緒に行動するような友達がいなかったため、それをはっきりと確かめる術がなく、しばらくは気のせいかなと思うようにもしていたのだけれど……たまたま忘れ物を取りに戻った放課後の教室で、クラスの女子数名が私の話をしているのが聞こえてきた。


『いくらなんでも、クラス中に声掛けてあの子のこと無視するのはやり過ぎなんじゃない? 面白いからいいけどー』

『脅したり殴ったりしてる訳じゃないんだから別にいいじゃん。ちょっとしたストレス解消だよ』

『まあ桃城さんなら、何したってどうせ何も言い返してこないだろうしね』
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