たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
部長は「何?」と聞き返しながら、私の頭を優しく撫でる。
表情も柔らかく、撫でられる感触にも安心する。


だから、いつもより緊張することなく「実はさっき白川先生から聞いたんですが……」と、聞きたいことを聞くことが出来た。



だけど、部長の顔がみるみる曇る。


どうしてそんな顔をするの? ただの誤解でしょう?


そんな顔をされたら、私の胸はざわつく一方だ。



すると部長は、ゆっくりと口を開く。




「お前には関係ない」




何で、そんなことを言うの。





「部長。私のことを好きだと言うなら、本当のことを話してほしいです。どんな現実でも受け止めます。あなたの口から聞きたいんです」


一生懸命、自分の思いを伝えていった。それがたとえどんなに下手な言葉だとしても、部長なら分かってくれるはずだ。


それでも彼は


「俺はお前を愛している。だけど、言いたくないこともある」


そう答え、それ以上は食い下がることも出来なかった。


愛していると言われれば嬉しい。私だって愛してる。


だけど、それならば全てを分かち合うべきじゃないの? それは綺麗事なの?



「……俺は先に寝る。お前も早く風呂に入れ」


彼は立ち上がり、リビングを出て行ってしまった。


喧嘩にはならなかったけれど、また気まずい空気が流れてしまった。
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