自由帳【番外編やおまけたち】
「また見つけたの、染谷くんのすごいところ。そういう気持ちも隠さず全部話してくれるところとか、私のことをちゃんと叱ってくれるところとか。あと、なんだかんだ言って桜田くんに優しく接してたところとか!」
矢継ぎ早に繰り出すと、染谷くんは呆気にとられた顔で私を見ている。私は肩で息をしながら、自分の話した内容を反芻した。
「あ。これじゃあ染谷くんの〝好きな〟ところ、だ。酔っ払うと正直になっちゃうね……へへへ」
「……そうだね」
純粋な憧れポイントを探すつもりが、どうしても染谷くんを好きな気持ちが先に溢れてきてしまう。
以前より体調が良くなってきて、飲酒出来る量も増えた。酔うというのは、こんなにも人を正直にさせてしまうものなのか。飲み過ぎて人に迷惑をかけないよう気を付けようと心に誓っていた時だった。
「ごめん松井。俺今、いつもより酔ってるから。先に言い訳」
言うが早いか染谷くんは背を屈めて、自らのそれで私の唇を塞いだ。普段は外でなんて絶対にしないのに、何の躊躇もなく。肩に置かれたままの手のひらからは、先ほどよりも熱い。
「……おやすみ。また明日」
ゆっくり唇が離れると、爽やかさの中に少しの甘さを感じさせる笑顔を浮かべて、染谷くんは立ち去った。
「……」
真っ赤に染まったであろう私は、挨拶どころか、しばらくその場から動くことすらできなかった。