手をつないでも、戻れない……
 
 私達は建物の裏へ行き、顔を見合わせ笑いだしたのだ。

 不思議な事に、笑ってはいけない状況であればあるほど、笑いが込み上げてくるのだ。


 笑いながらも、なんとか彼が喋りだした。


「あの、坊さんこけるかと思ったよな」

 そう言って、彼は、また笑った。


「もう、笑い堪えられないかと思ったわ」

 私も、また笑った。


 自然に、何も考えず、ただ、笑っていた気がする……



 ひとしきり笑って落ち着くと、また、彼の方が先に口を開いた。


「久しぶりだな…… 元気か?」

 ちょっと、ぶっきらぼうな言い方も声も、昔と変わらない優しさを踏んでいるのが分かった。


「うん。樹さんは? 」

 私も、少しほほ笑んで言った。


「まあな……」

 彼は、優しい真っ直ぐな眼差しを向けた。

 一瞬、吸い込まれてしまいそうになる瞳に、胸の奥がキュンと音を立てた。

 私は、彼の視線に耐えられず、目を剃らせた。



「娘さん、確か今年高校受験よね?」

 私は、あえて明るく話題を作った。


「ああ。良く知っているな?」

 彼の表情が、一瞬だが曇ったのは気のせいだろうか?


「甥っ子と一緒でしょ? 時々話題に出るから。頭の良い子だって言ってたわよ」


「そんな事は無いよ…… なあ、美緒」

 彼に名前で呼ばれ、胸の奥が一瞬熱くなった。


「なに?」

 平然を装い答える。


「今、何処に住んでいるんだ?」


「隣の西町よ」

 答えながら彼の目を見た。

 これ以上、あまり自分の事を知られたくなかった。


 
「もう、行かなきゃ……」

 私は、式場へと向きを変えた。


「おい!」


 彼の声に、足を止める。
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