手をつないでも、戻れない……
「ピーンポーン」


 玄関のドアへと走る。


 ノブに手を回し、ドアを開けると、そこには、眩しいくらい愛おしい人の姿があった。

 すぐにでも、抱きつきたいくらいの気持ちを、ぐっと押さえる。


「いらっしゃい。あがって……」


「ほら、これ……」

 彼の手には、ワインのボトルと、昔から私が好きだったお菓子の袋が下げられていた。


「あ…… これ、覚えていてくれたんだ」


 嬉しさを隠す事は出来ずに緩んだ顏で、彼の手からワインとお菓子を受け取った。



 同時に、荷物が無くなった彼の手が、私の頭をぎゅっと彼の胸に押し付けた。


「逢いたかった……」


 彼の少し切なそうな声と、彼の匂に私は素直になってしまう……


「私も……」


 そう言って、彼の胸に顔をグッと埋めると、彼の手が背中に回りぎゅっと強く抱きしめられた。



 そして、片手で私の頬を上げると、優しく口づけを落とした。


 何度も軽く落とされる唇に、気持ち良さと愛おしさで胸が熱くなる。



 彼は、私の手から、ワインとお菓子を奪い、コトン床に置いた。

 それが合図かのように、彼の唇が深くなり、私の舌に絡みついてきた。


 膝の力が抜けて行く身体を支えるように、腰に回った彼の手は次へ進もうとしていた。
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