僕らのチェリー

2.忘れられない想い




今の気分とは裏腹に、空は憎いほど真っ青に晴れている。

ミュールを履いているせいで足が痛かった。自転車をあの店に残してしまい今更ながら置いてきたことを後悔する。

だけど戻りたくない。

もう顔も見たくない。

恭介も。

あの健二っていう男も。

何が自業自得、だ。

一体何様のつもりなんだろうか。

絶えず湧いてくる怒りで澪は後ろから呼ぶその声に全く気がつかなかった。

急ブレーキの音ではっ、と目が覚める。


「笠原って足速いんだな。チャリに乗っててもついてくのがやっとだったよ」


振り向くと、ヨネが澪の自転車を降りて屈託のない笑顔を見せた。


「笠原、すげえ汗」


慌てて澪は額の汗を拭った。


「そういうヨネこそ」


ヨネの背中もびっしょりと汗で濡れていた。
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