僕らのチェリー

2.正義の味方




暗闇の中を満月の光が差し込んでいる。

その吸い込まれそうな光は怖いほどにきれいに輝いて、夏にも関わらず少し寒気がして身が震えた。


「これ返すね。ありがとう」


澪の家に着くと、持ってきたアルバムを彼に渡した。

ヨネは少し微笑んでそれをぱらぱらと捲り始めた。懐かしそうに目を細めている。

その視線の先にジャングルジムを背景に彼と恭介が一緒に写っている写真があった。


「昔、おれがキョウのことなんて呼んでたか知ってる?」


澪は首を横に小さく振った。


「正義の味方って呼んでたんだよ。
キョウは皆から頼りにされてておれに困ったことがあると必ず助けてくれたんだ」


それは澪にとって今の恭介からは想像できない話だった。


「おれが泣いてたら一番に声をかけてくれたのはキョウだった。
いじめられたと話すとキョウがいじめた奴にやり返してくれたこともあったんだ。
だからおれにとってキョウは正義の味方。
ヒーローみたいなものかな」

「それは今も?」


彼は答えの代わりに白い歯を見せた。


「今は待ってよう。
キョウは秋谷を連れて帰るって言ったんだ。その言葉信じて待つしかないよ」
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