【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
雅さんは墓石に手を合わせたあと、振り返って街並みを見つめる。ビル群と手前に広がる住宅街。ここで雅さんは育った。

「素敵な街並みですね」
「嬉しいよ。紬にそう言ってもらえて。さあ行こうか」

ほんのりと笑う紬さんの横顔。その寂しさを癒やしたいなんて傲慢かもしれない。

手桶を握り、登ってきた石段へと向かう雅さんの背中に、私は思わず呼びかけた。

「雅さん!」
「なんだい、ハニー?」
「雅さんに寂しい思いはさせたくないです」
「紬?」
「完全には無理だとは思います。でも寂しいときには寄り添いたいです。寄り添わせてください」
「ありがとう紬。ずっとそばにいてくれ。それだけでいい」


雅さんはほんのり笑うと私に手を差し出した。手をつないで歩く。

ずっとこのひとと生きていこうと心に決めた。



(おわり)


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