【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
カードキーで鍵を開けると雅さんはドアを押し開けた。中から漂ってきた香りが鼻をくすぐる。コーンスープの匂いがする。

ぐー、ぐるるるる。
緊張が解けたせいか、今まで感じなかった空腹が私を襲う。


「キミは顔も正直だけどお腹も正直だな」と、雅さんに笑われた。背中を押されたのもあるけれど、食べ物の匂いに釣られて自然と足が動いてしまった。今回もスイートルームのようで正面は広いリビングになっていた。テーブルにはすでに料理が並んでいる。サラダやサンドイッチ、保温ジャーでスープも温まっている。


「ハニー、食べよう。何か飲むか?」
「雅さんは?」
「サッパリと白ワインがいいな」
「じゃあ私も」


雅さんがワインを用意する間、私はお皿にかけられたラップをはずし、取り分けた。ホテルの料理とあって盛り付けもきれいだ。サンドイッチの中身もローストビーフやスモークサーモンなどちょっと豪華で、切り口も色鮮やか。

注がれたグラスで乾杯する。辛口のシャブリはすっきりとした味わいで軽食に合った。

お腹も満足してリラックスした私は大きく息を吐いた。広々として出張で利用するシングルとまったく違う空間。ソファも堅すぎず柔らかすぎずちょうどいい。癖になりそうで怖い。

コーヒーを入れようと立ち上がる。壁側にあるミニカウンターの中に入り、ポットを手にした。


「ハニー、満足したところで話がある」
「なんですか。今日は酔ってませんから帰りますけど」
「タチバナのこと、忘れられないのか」
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