【番外編追加中】紳士な副社長は意地悪でキス魔
そういえば木曜日、ブライアントホテルオーナーの二階堂氏がやってきて、予定していたデザイナーとの打ち合わせが流れたのを思い出した。

唐澤さんは1時間後に迎えに行きますからっ!と甲高い声で叫び、私はスマホをベッドに投げおいた。キンキンと頭に響いたのもあるけれど、これから出かける支度をするのに時間が足りない。まして雅さんに会えるのにちゃんとメイクもしたいし服も慎重に選びたい。私は速攻でパジャマを脱いで浴室に駆け込んだ。


*―*―*


ライトイエローのワンピースにライトグレーのコットンジャケットを羽織る。
試着しやすいように髪はポニーテールにしてシャンパンゴールドのシュシュでまとめた。
軽めのローズピンクの口紅にグロス。
香水は甘めのフルーツ系。

ちょっとかわいすぎたかなと思いつつ、いつものパンツスーツ鉄板コーデと差をつけたかった。せっかくの休日、いつもと違う私を見せたくて。

でも。


「おおーっ! 藍本さまっ!! いつもと装いが違います! 眩しすぎて唐澤めまいがいたします!」


マンションのエントランスに現れた唐澤さんは手のひらをわざとらしく額にあて、膝を曲げてよろけるふりをする。濃紺のスーツにピンクチェックのネクタイ、いつもの爽やかな取り合わせだ。


「だって休日だから」
「いつものバリキャリスタイルも素敵ですが、今日の春色休日コーデもたまりませんねっ!」
「唐澤さん、ほめすぎてない? この前、二階堂氏にほら、私と違ってお嬢さんは上品でかわいくて品があって、とか言ったから?」
「め、め、滅相もございませんっ!! この唐澤、本当にそう思いまして、本日の藍本さまのこのお姿を雅副社長にもお見せしたかったと。残念でなりません!」
「お見せしたかった、って?」
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