ブラックコーヒーが飲めるまで、待って。
*初恋はほろ苦い*


――ガラガラ、ガコンッ。

食堂の前に設置してある自動販売機で私が買ったのはパックのコーヒー牛乳。ストローをさして口に付ける寸前で、隣の自販機から飲み物が落ちてくる音がした。


「桜井はまたコーヒー牛乳か。お子ちゃまだねえ」


わざと語尾を伸ばして煽るような言い方をしながら、和泉(いずみ)先生は缶のブラックコーヒーを飲む。


黒いスーツにネクタイをして、背丈はすらりと高い。顔は整いすぎだし、ドライアイがひどいとたまにかけている眼鏡姿は本当に反則ってぐらい、よく似合う。


「先生って、何歳でしたっけ?」

本当は知っているけど、少しでも会話をしようと話を振る。


「今年27」

……つまり、私とは10歳差。

大人になればさほど気にならない年齢の差も、高校生の私と先生では、果てしないほどの距離がある。

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