bittersweet
「会社どこなの？迎えに行くから住所教えて」

電話口で吉岡くんが言った。メールでオッケーの返事をしたら昼休みに電話がかかってきて。

「いいよ。駅の方で待ち合わせで」

「いいっていいって。琴美ちゃんの会社どんなところか見たいしさ」

恥ずかしいと思いつつもニヤニヤがとまらない。ほんとにヤバイ私。

「えっと。じゃあ・・・」

それから定時までの間は長く感じた。

5時になると同時にタイムカードを押しあわててロッカールームで着替える。

ロッカールームで一緒になった経理事務の一色さんが

「今日はあわててるね。デート？」

と声をかけてきた。

「いえ。友達と待ち合わせしてて」

あわてて外に出ると駐車場に白くて丸っこい軽がとまってた。

なんかイメージと違う。もっと高級車に乗ってそうだったのに。

吉岡くんが手を振ってる。

私は顔がほころぶのをなんとか押さえながら助手席に乗る。

「ありがとう。すぐにわかった？」

「ナビに登録したからすぐ着いたよ」

なんか恋人同士っぽいなと思う。

「腹減った！なんか食べようよ」

吉岡くんがそういって車を発進させる。

営業帰りの高田さんが会社の入り口でニヤニヤとこっちを見てるのが見えた。
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