俺様社長はウブな許婚を愛しすぎる
「それにお兄ちゃんは千和さんにベタ惚れなんですよ？　どんな千和さんだってお兄ちゃんが嫌いになることは絶対ありませんから」

自信満々に言われると、ちょっぴり照れ臭くなりつつも、そうであってほしいと願わずにはいられない。

「じゃあ今夜お兄ちゃんと会う約束をしているんですか？」

「ううん、まだ約束はしていないの。だからどうにか今日時間を作ってもらえたらいいんだけど……」

「千和さんにそんなこと言われたら、なにがなんでも時間を作ってくれますよ」


そんな話をしながら灯里ちゃんと今日の予定などを確認していると、玄関のドアが開いた。

「大川さん！」

そして聞こえてきたのは、珍しく余裕のない表情で声を荒げる田中さんの声。

「田中さん？　……どうされたんですか？」

「あれ、今日お兄ちゃんは？」

灯里ちゃんとふたり、田中さんに向けて声を掛けるも、彼は慌ててこちらに駆け寄ってきた。

そして私の前で立ち止まり呼吸を整えると、耳を疑うようなことを言った。
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